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学校再生の軌跡 守谷市立御所ヶ丘中学校

 この7月21日、タイトルの守谷市立御所ヶ丘中学校を訪問した。以下はその時の記録である。

 関東最後のベッドタウン誕生が期待されるというつくばエクスプレス(TX)は秋葉原と学園都市を最速45分で結ぶという快速新線である。その沿線には、まだ未開発の地域が多く東京周辺最後のベッドタウンとして地元の期待を集めている。
 その途中停車駅になる「守谷」に、この中学校はある。
 7月21日、今年度最初の訪問指導の日であった。同校は平成15年度当初にテトラSを導入して、今年で3年目になる。
 3月に同校の初代ファシリテータである辺見芳宏教諭から「これまでに見られなかった厳粛な卒業式ができました」という連絡をいただいた。その直後に学校訪問の機会があり、落ち着いた生徒たちの授業風景と同じく活気を取り戻した同校職員の顔に接し、「学校改革は軌道に乗った」と実感した。
 しかし、その時に気になることがあった。16年度終了時に、大幅な人事異動があるらしい雰囲気を察知したからであった。これまでの実践校でも、人事異動によってテトラSへの取り組みが大幅に変わり形式的になってしまう例が多かったからである。    
 案の定、小川隆司校長はつくば市(市立筑波東中学校)へ異動、野堀憲教頭は守谷市立けやき台中学校へ、ファシリテータの辺見教諭の市教委への転出があった。とくに辺見ファシリテータの異動は正直、頭が痛い問題だと感じていた。彼のリーダーシップがテトラSの成功が大きく寄与していたからである。
 それだけに、この7月の訪問は、人事異動の後遺症がありはしないかという疑問を持った訪問になった。昨年まで、問題多発校として教頭2人制をとっていた同校では菊池靖夫教頭だけが残り、新しく菊池孝二校長が赴任していた。 整列した自転車は学校の落ち着きを象徴する

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この日は21日で第1学期の終了式の日である。しかし、午前中は授業をするというので、私も少々驚いた。夏休みを前にした終了式の日に授業は成立するものだろうか?生徒の心は浮き足立っているはずだし、生徒がよほど落ち着いていないと授業どころの話ではなくなる可能性がある。
 しかし、私の不安は見事に払拭された。私が見たのは3校時であり、教師の話はほとんどが夏休みの注意事情等の話であったが、生徒たちは驚くほど集中して話を聞いていた。
 その後に、終了式が行われたので見せてもらった。会場はしんと静まっており、生徒のざわつきもまるでなかった。校長の話や生徒指導主事の話にも、みんなが真剣に耳を傾けていた。これは私が同校の集会の姿である。     静かに話を聞く集会学校再生の軌跡 守谷市立御所ヶ丘中学校_e0038448_21132188.jpg

 話をテトラS導入時の平成15年度の当初に戻そう。同校がテトラSの導入に踏み切った時点の話をしておきたい。
 4月当初に私が始めて指導に赴いたときには、問題多発校独特の雰囲気があった。導入時には先ず校内全体を見せてもらうのが私のはじめの仕事である。案内されて校内を回ったが、廊下にはゴミが散乱し、教頭先生がそれを拾って歩く、廊下の飾り付けや掲示物もお粗末な状態だった。環境美化に目を向けていられない状態を示していた。
 各教室は、どの教室もざわついていたが、それは活気のあるものではなく、私語や出歩き、整頓されていない机や生徒の姿勢から出てくる、けだるさを感じさせた。どの教室でも教師は必死にしゃべっているか、プリントを預けてやりたい生徒だけを相手にしている。居眠りや出歩きは黙認状態だった。教室の床を見ると紙くずや菓子の袋が散乱している。
 校内暴力が頻発し、新聞の記事になることもしばしばだということだった。このような学校に限って、保護者からのクレームも多く、そのほとんどは教師や学校のやり方を非難するものであるという。
 当時の守谷市の教育長が小川校長に「テトラSの導入」を勧めるる声があったのも、学校の状態を見かねてのものだったようである。
 その後、管理職との懇談を行ったが、それぞれに必死に生徒に対応しようとする気持ちが伝わってきた。教師たちもまた、懸命に動いているという。(「これだけの教師の気持ちが生徒に伝わっていない。ムダなエネルギーを消費している」)そう思ったが、このエネルギーが適正に生徒に注がれれば、立ち直りは早いと私は直観した。私は「1年で甦るように頑張りましょう」と教師たちに訴えた。
 「私が直すのではありません。先生方が真剣にテトラSの実践の中で、それぞれに行動の密度を濃くしてくれれば、この学校は1年たてば見違えるような学校に変容します」
 始まって間もなく対教師暴力が起きたが、教師たちは今までになく落ち着いて対応したと聞いた。テトラSの班会は週1回を定例として行われている様子が辺見ファシリテータからは私に逐一報告があり、疑問点メールでは質問をし即メールで返信するという方法をとった。
 2学期に訪問したときには「問題発生は著しく減少したということであったが、教室での生徒はまだ落ち着いているとは言えず、清掃や環境美化にも手が届かないようであった。

 この学校の変容の確認はやはり5月であった。「昨年とはまるで違う」という連絡が入った。
 学校内は落ち着き、授業も崩壊することはなくなり、校内も見違えるようにキレイになった。ここで、私が辺見ファシリテータに言ったことは「これだけ江落ち着いて、ようやく普通の状態になりました。問題はこれから先ですよ。生徒たちが学校が楽しい。授業が楽しい」という学校を目指すためには、先ず学校が落ち着くことが必要です。さあ、これから先生方が班会ではにを話し合って深めていくかが最大の課題になります」
 問題多発校は、このように沈静化するには1年ほどの期間がかかる。
 問題は、そこで「ああ、よかった!」と気をぬいてしまっては、教師本位の学校でしかなくなる。
生徒がはつらつと学校生活を送り、勉強に集中するようになるためには、それからが勝負なのである。
 いつまでも「学校はつまらない」という感情を生徒が固定観念として持っているようでは、本物の改善ではない。生徒の目がいかに輝くかが目標でなければならないはずである。テトラSを深めていくと、それが必ず見えてくるはずなのである。

 御所ヶ丘中学校は、この7月の訪問の時点では、たしかに教師たちが「これからどうするか」をつかみ始めたように見えた。ここで、テトラSをいかに活用するかが同校の課題であろう。
 テトラSの最先進校山形県鶴岡市立第4中学校が、導入後8年目になる今日でもテトラSを続けているのは、それだけ学校には改善部分が残されているからであろう。
 同時に『AQ活性の魔術』でヒントを与えているように、学校が教育を学校という枠の中で自己完結できるものなのかどうかも、教師間のコミュニケーションが進めば進むほどに明確になり、何をすべきかが分かってくるはずである。
 幸い、新任の菊池孝二校長は大変な熱意を示しておられる。新しくファシリテータになった福田理明教諭も、大変な張り切りようで学校をひっぱている。私は御所ヶ丘中学校にも、日本の新しい学校のあり方、教育のあり方の先鞭をつけるべく頑張ってほしいと期待している。
                                   (笠井よしつぐ記)
by AQ-katsuyo | 2005-09-22 16:56 | AQマジック


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